腹診
腹診(ふくしん)は、日本で発達した漢方独特の診察方法です。
腹部には、様々な体質を反映する所見が現れるといわれています。
腹部の緊張の状態、どこに圧痛や抵抗感があるかなどをみて判断をしていきます。
従って、たとえ症状が‘頭痛’や‘めまい’であっても‘腹部’の診察をすることとなります。
腹診では、どのようなことを診ているのでしょうか?
以下に代表的なものをあげます。
「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」
肋骨弓の下縁に抵抗や圧痛がある。
柴胡(さいこ)という生薬の入った薬方を選択する目標となります。
例:大柴胡湯(だいさいことう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、柴胡桂枝湯(さいこけしとう)など。
「心下部振水音(しんかぶしんすいおん)」
みぞおち付近をたたいて、ポチャポチャと音がする。
水の停滞しやすい体質をあらわします。
例:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、六君子湯(りっくんしとう)など。
「臍下不仁(せいかふじん)」
臍下の腹部に緊張がない。腎虚の所見。
例:八味丸(はちみがん)など。
「臍傍抵抗圧痛(せいぼうあっつう)・小腹急結(しょうふくきゅうけつ)など」
下腹部に押さえると痛み(圧痛)や硬い感じ(硬結)を認める。
瘀血(おけつ)の所見。
例:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)など。
「腹直筋攣急(ふくちょくきんれんきゅう)」
腹直筋が棒状に過緊張するもの。
虚弱、虚労の所見。
例:小建中湯(しょうけんちゅうとう)など。
秋田 治之