漢方Q&A - 対応疾病⑬漢方は夏ばてに効きますか?

<質問1>45歳の女性で、身長162cm、体重45kgの方。
毎年夏になると食欲がなくなり、怠く何をするにも億劫です。
夏バテだと思いますが、漢方は効果がありますか?

割と涼しい日が続いた後、急に暑くなり、また涼しくなるという形の時は、
温度の変化に身体がついて行けず、段々食欲もなくなり、疲れやすくなり、頭痛や吐き気、
下痢などの症状が出てきて学校や会社に行くことが出来なくなるという人もおります。

これらは夏バテ、暑気あたりと言った症状です。

<質問2>どのような傾向の人がなりやすいのですか?

夏バテを起こす人はどちらかというと前述のような痩せ型で、胃下垂傾向のある方です。
漢方で言う虚証に属する人が多いようです。

こういう方は、本来胃腸が丈夫ではありませんから、一寸したことで胃腸を壊し易いのです。
暑いからと言って水物をがぶがぶ飲んでしまうとか氷やアイスクリームを沢山食べていませんか?
そうすると消化機能を落として、下痢になりやすくなり、段々やる気も無くなってきます。

でも今年は、結構体格の良い人で外で工事をなさっている人なども夏バテと言って来られました。
例年になく、寒暖の差が激しい年なのではないかと思います。

<質問3>夏バテを防ぐには、どうしたら良いのでしょうか?

先ず、消化機能を正常に維持するためには、物を良く噛んで食べる。
お茶や水の様な水分で噛まずに流し込むような食べ方はしないことです。

澱粉質、等質と言った炭水化物は口の中で噛むことによって
相当部分消化してしまいます。そうすれば、胃腸の負担が大部軽くなります。

おかゆは消化がいいのですが、矢張り良く噛まないと消化しませんから、
飲み込むような食べ方をしては折角の消化の良さが損なわれてしまいます。

風邪などの時も出来るだけ消化の良い物を召し上がりよう勧めています。
昔の本には、肉や油や匂いの強い物は避けるようにと書いてあります。

<質問4>夏バテ予防にウナギというのは、良くないのですか?

夏バテになると消化能力が極端に落ちてしまいます。
こう言うときはもっと消化の良い物を取った方がよいわけで、
夏バテになってからと言うよりは予防の方が効果的でしょう。

そろそろバテ気味かなという時には効果を発揮すると思います。
ウナギは夏バテの予防としては古く奈良時代から有名です。

万葉集の巻16に「痩せたる人を嗤咲ふ歌二首」と題して大伴家持の詠んだ歌の一つに

「石麻呂に吾物申す夏痩に良しといふ物ぞ鰻漁り食せ」と言うのがあります。
この当時から夏痩せに鰻が良いとされていたようです。
白焼きにして蒸す関東風のやり方が魚の油を適当に削いで消化吸収を良くしているのでしょうか。

処で、脱線しますが、ウナギの蒲焼きに山椒を掛けますが、なぜだかご存じですか?
お寿司にガリが付いてきますね。
あれは生姜の健胃作用、嘔吐を鎮める働き、しゃっくりを止める働きがありますし、
魚のつまにでるシソの葉は魚の毒を取る働きをします。

山椒も胃腸を温めて、腹痛を治して、お腹のガスの排出を良くし、
回虫を駆除すると言う働きがあります。

<質問5>お腹を温めることに意味があるのでしょうか?

そうです。お腹を冷やしてはいけません。
貝原益軒の養生訓には「夏になると食物の消化に時間がかかるので、飲食物の量は控え目にする。
温かい物を食べて、胃腸を温めると良い。冷水を飲んではいけない。
冷たい物、生ものは総て禁物である。冷たい麺類は沢山食べてはいけない。」
と書いてあります。

冷水で身体を冷やすこともいけない事とされており、
江戸時代から身体を冷やすことに非常に注意が払われております。
現代のようにエアコンで身体を冷やし、食べ物で又冷やしますと完全に胃腸の調子が悪くなります。

出来ることでしたら、先ず養生をキチッとして、
それでもダメでしたら先生に診て頂くと良いと思います。

参考までに一般的に良く処方される漢方薬をご紹介しますと、
清熱益気湯というお薬で、夏になると食欲がなくて食べれず、
水っぽい物を欲しがり、手足が怠くなり、足の裏がほてり、時に下痢したり、
大便が緩くなったりする症状を目標として治療致します。

この症状のうち幾つかあれば良く効く処方です。

また、夏を旨く乗りきるには食生活に充分気をつけること、
疲労などをため込まないことが大切です。

漢方は養生ということをとても大切にしています。
日々の健康を維持するためには確かに養生を心がけることは必要ですね。

夏バテには如何に身体を冷やさないかという工夫が大切かお解り頂けたかと存じます。

回答)石川 友章

 


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