漢方Q&A - 対応疾病⑪冷えに効きますか?
冷えは西洋医学では治療対象ではありませんが、
漢方では体質から改善することが可能です。
冷えにもいろいろな種類がありますので、ぜひ漢方医とご相談の上、
ご自分の体質に合った治療を受けて下さい。
回答)久能 治子
*****************************************
<質問1>33歳のOLです。 身長158cm、体重60kg、生理不順と生理痛がありますが、
一番困っていることは最近電車に乗っても冷房が強く感じ、会社では冷房がきつく、膝掛けに
セーターを羽織っております。 足が冷え、風邪を引きやすくなってしまい、この夏だけでも
3回以上風邪を引いています。 漢方がよいとのことですが、本当に治るのでしょうか?
冷え症は西洋医学では病気という認識がありませんので、治療の対象としておりません。
冷えそのものが漢方医学的概念で、こう言った意味からしても漢方が得意としている分野の一つと言ってよいでしょう。
<質問2>冷え症は病気ではないのですか?
この方のように外因として身体の外側から冷やされても症状として出てきます。
気温の変化が大きな役割を担っている訳です。 内因としては食べ物による影響です。
外が暑いため、冷たい水、アイスクリーム、氷、ジュースやビールといった冷たい物を
種類を替えて沢山飲んだり、果物や甘い物を沢山取りますと身体の内部から冷えてきて、
胃腸の働きが衰えてきます。という事は、病気の予備段階を造ってしまうという事です。
成人ですと必要な水分量は1000cc~1200cc位とされておりますが、
沢山飲んだ水分が漢方でいうと処の「水毒」となって色々な症状を現します。
<質問3>水を沢山飲んではいけないのですか?
水や塩を沢山取る水療法とか塩療法ということをお聞きになったことがあるかと思いますが、
あくまでもこれは体力のある方が試してみる療法で、血圧が高い方やアレルギーがあったり、
胃下垂や痩せた方には不向きな療法です。 特に水毒体質の人には、良くありません。
<質問4>水毒体質という言葉は余り聞いたことがありませんが、どういうことでしょうか?
常に水を取りすぎる傾向の人が結構多く見られます。適量な水分なら悪さをしないのですが、
取り過ぎますと色々なところに症状として現れてきます。多く飲みすぎますと足が浮腫んで来ます。
いつも軟便や下痢という人もいます。 車酔いや船酔いをしたり、眩暈や頭痛、関節の痛み、
手のこわばりと言ったものまで出てきます。
こう言う水毒に因る症状が出やすい体質を水毒体質と言います。
色白で小太りで肌のきめの細かい人は、そういう傾向にあります。
<質問5>水毒体質を改善するようなお薬はあるのでしょうか?
利水剤といって、身体の水はけを良くするお薬があります。例えば色白で小太りで肌の
キメの細かい人で浮腫が出たり、関節が痛かったりした場合、防已黄耆湯というお薬を用います。
痩せて痛みや浮腫が取れて来ます。他には二日酔いに五苓散など多くの薬があります。
<質問6>水を飲みすぎると怖いことが起きるのですね。 注意しなければいけませんね。
ではどうしたら冷えを治すことが出来るのでしょうか?
この方は生理不順や生理痛があるということですので、もう一つ漢方でいう
瘀血(おけつ)という概念を入れて治療を考えなければなりません。
<質問7>瘀血とはどんなことなんでしょうか?
瘀血とは古血のことを云い、子宮や卵巣などに生理のときに血流が多くなりますが、
そのような血液が鬱滞して起こす症状をいいます。
お腹の診察で下腹部の盲腸のある部分と反対の部分を押しますと痛みを感じることがあります。
これを漢方では瘀血といいます。 他に症状として見られるものとして、舌の下に黒ずんだ
静脈叢が見られたり、肌荒れがあったり、肌に紫斑が出たり、生理不順や生理痛が起きたりします。
そのため手足が冷えたりのぼせたりという症状が伴ってきます。
<質問8>瘀血の症状を治すことが出来るのでしょうか?
駆お血剤を用いますと、これらの症状が取れてきます。
<質問9>この方の場合は、瘀血からから来ているものでしょうか?
この方は症状からしてもお血が関係していると考えて良いと思います。
駆お血剤を用いる場合、その人の気力や体力の程度、胃腸機能の状態や
症状の強さなどを勘案して処方を決めていきます。
最近は何処に行っても冷房が効いており、冷えの原因となるものは
日常生活あらゆる所にありますので、外からの冷えに対しての防備が大切です。
<質問10>どのようにしたら宜しいのでしょうか?
こういう方はお風呂に入っても中々暖まらなくて、のぼせて長く入っていられません。
そこで先ず足湯して、膝から下を温めてから入りますと全身を温めることが出来ます。
<質問9>膝から下を温める事が大切なのですか?
大腿を冷やすよりは膝から下を冷やした方が身体が冷えるということが
最近解ってきましたので、ルーズソックスは冷え防止には、良い方法です。
寝るときに足が冷えている人は、ルーズソックスを履いて寝ると良いです。
<質問9>そうしますと、冷えを予防する方法として、冷たい飲物や食べ物は極力取らない。
冷房に注意して温かい物を着る特に膝から下は冷やさない。こういう日常の注意をしながら、
冷え症を漢方薬で体質から治して行くということでしょうか?
そうです。日本人は湿気の多い国に住んでいますので、水に関しても
冷えに関しても注意を払う必要があります。
回答)石川 友章