漢方は日本の伝統文化 / 川越 宏文先生

漢方薬を用いた治療をしていると、予想もしていない質問を受けることがあります。

「漢方の本場は中国ですか?」というものがあります。漢方薬や漢方治療については、様々な誤解がまだあることは事実ですが、この質問もその代表です。

そんな質問を受けた時には、反対に「日本語の本場は中国ですか?」というように問い直します。その質問に対して多くの方は「いいえ」と答えるでしょう。

なぜなら、我々が我々の言葉である日本語の授業として国語を勉強する時に、中国語の辞書を用いることは先ずありません。

現在、日本の多くの漢方医が行っている漢方治療の技術は、確かに中国や韓国を通じて日本に伝わりました。しかし、我々日本人は様々な工夫をこらして、日本の伝統文化としての漢方医学を作り上げたのです。

特に、江戸時代にはお腹を触って診察するという腹診が発達し、日本の漢方医はこの所見を処方決定の重要なよりどころとしています。中国も日本も、共通の漢字や処方を用いることがありますが、時として異なる意味に用いられるとがあります。

最近、日常診療の中で役立つ伝統文化としての漢方に現代科学の目が入りつつあります。たとえば、食欲不振に用いられてきた六君子湯に食欲増進ペプチドを増加させる働きが解明されつつあります。

文頭文化と現代科学の融合により、漢方は世界から更に注目されそうです。
 

 


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