漢方Q&A - 産婦人科について⑤妊娠の病態生理とは?

漢方医学では、古来より妊娠中の投薬について規制を設けています。

漢方医学の原典である「金匱要略」には妊娠病篇の記載があり、
また、「備急千金要方」には妊娠各月の安胎薬と流・早産予防薬の記載があります。

漢方の成書には生薬レベルでの妊娠に対する安胎薬、慎用薬、
禁忌薬(エキス製剤には含まれていない)の基準を載せています。

さらに、漢方医学から診た独自の概念による妊娠中の病態生理を言及しています。

すなわち、
①胎児の発育によって母体は陰血が不足し、口渇、便秘、体熱感、眩暈などを生じやすい。
②胎児発育により、母体の気の運行・流れを妨げ、気うつを生ずる。
③水分代謝に影響を与え、痰(水滞)を生じ、神経過敏、不眠、胸腹部膨満感、
嘔吐などを発現する。
④脾胃虚(胃腸障害)や腎虚の症状である腰痛、浮腫、歯痛、耳鳴りなどを生ずるとあります。

それ故、妊娠中の漢方治療の原則を以下のように挙げています。

①補陰血、行気去痰、補脾胃に留意する。
②母体は陰血をさらに少なくし、内熱を生じ、陽盛となるので、清熱養血が必要である。
③妊娠中には発汗、瀉下、小便の利は禁じている。
過度の発汗は陽気を傷める(麻黄製剤は発汗を促す。エフェドリンは末梢循環を損ない、胎児胎盤系の血行障害を生ずる)。
従って、妊娠感冒では葛根湯や麻黄湯は禁忌と考えるべきである。
過度の瀉下は陰血を傷める(大黄製剤の注意点)。小便の利は津液(体液)を損なうので注意する(利尿剤の問題)。
④投薬上の注意事項として、「黄帝内経素問」六元正紀大論篇には、「有故無殞、亦無殞也」
(妊娠中でも、その薬の目標となる病が有れば危険はなく、また胎児にも害を及ぼさない)、
「衰其大半而止」(大半が治った場合には、何時までも投薬を続けず中止しなければならない。
長く劇性の薬を与えていると、遂には母子ともに死の危険があると戒めている)の記述があります。

回答)村田 高明


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