漢方Q&A - 対応疾病⑮漢方は慢性C型肝炎に効きますか?

<質問>47歳の男性。
5年前に非常に疲れやすいので内科を受診したところ、C型肝炎に罹った事が無いか聞かれました。

血液検査ではC型肝炎に罹ったことがあり、肝機能障害も軽度見られるとのことでした。
それまで丈夫で殆ど医者にかかった事はなかったのです。

それからは数カ月に一回検査をしていますが、肝機能は中々正常にはなりません。
症状もいまいち改善されません。

早く治したいと思って知人に相談したら漢方薬が安全だと勧められました。
新聞に漢方薬にも副作用があり、小柴胡湯で間質性肺炎になって10人の方が亡くなった
と言う記事が出て、
本当に安全なのか心配です。漢方は慢性C型肝炎に効きますか?

これは医者にとっても患者さんにとっても非常に大きな問題です。
この方の質問は大きく分けて二つある思います。

第一は、慢性C型肝炎の治療法として何があってどれが自分にあっているか。

第二に漢方薬は安全だと言われているのに嘘ではないかと言う事です。

まず、肝炎を起こす原因には色々ありますが、その一つがウイルス性肝炎です。
A、B、C、とアルファベットでウイルスの名前を表示しますが、
現在Gまで見つけられています。

一般に良く知られているのがA,B,Cの3タイプです。
特に今問題になっているのが、ご質問のC型肝炎です。

慢性C型肝炎の一番の問題点は放っておいて治る病気ではなく、
緩やかにですが病気が進行して行き、肝硬変になり、
そこから肝癌が出来てきます。

他のウイルス性肝炎よりも発生率が高いのです。

治療法としては肝硬変の予防や肝癌にならないために、
インターフェロンが使われております。

これは身体の中のウイルスが少ないときは有効であると言われております。
しかし副作用も多くでます。

初期にはインフルエンザ様の副作用が出て、
高熱や頭痛、関節痛、全身倦怠感等が出てきます。

脱毛や鬱病にもなるといわれておりますし、
間質性肺炎も500人に1人は起こすと言われております。
副作用の点、有効率の点などで未だ十分ではないと言われています。

漢方では、原則として病名で診断して投薬することは余りしませんが、
いわゆる西洋医学的に診断して、小柴胡湯を慢性肝炎の患者さんに投与し、
肝硬変や肝癌の発生を防ぐことが認められています。

従って西洋薬のような使い方でも有効性が確認されていますが、
漢方の大きく違うところは、患者さんの体力や気力を診て、
今の病気の状態を丁寧に脈や身体を触って判断して薬を出すので、
慢性肝炎の患者さんでもいつも小柴胡湯とは限らないわけです。

皆さん風邪を引く時、いつも同じ症状ではありませんね。
高熱の出る風邪であったり、鼻水やくしゃみで始まることもありますし、
喉から始まることもあります。

下痢をした時などでは胃腸型の感冒になっている等、
色々な風邪があります。

今年はインフルエンザが流行りましたが、高熱の人ばかりではありません。
忙しすぎて体力が無くなっている時は元気がないので、
風邪の方も元気がなくなってしまうのです。

この様に罹った人の状態によっても色々な症状が出ます。
漢方ではこの罹った状態の病人をリアルタイムに診る訳です。

ですから、風邪と言ってもインフルエンザの症状の人と
喉痛の人では、出す薬が違ってきます。

小柴胡湯がいくら自然の生薬と言っても、無害と言うことはありません。

特にアレルギー疾患が多くなってきている時には、
蕎麦を食べてもアナフラキシーショックで亡くなる方もいるわけですから、
全く何も出ないと思っていると、とんだことになってしまうのです。

でも漢方には長い歴史があり、生薬の配合にも出来るだけ害作用の出ないように
配慮がなされています。

小柴胡湯で間質性肺炎になって10人の方が亡くなったと言われたのも、
小柴胡湯で起きたとは全面的には言えないのですが、
例え小柴胡湯で間質性肺炎が起きたとしても人口10万人に対し4人と言われています。

一般に西洋薬の副作用で「まれに」と言われる時でも、
人口10万人に対して100人の割合で出ます。
これから見ても非常に少ないと言って良いでしょう。

間質性肺炎の専門家のお話ですと、これは難病の特発性間質性肺炎が出てくる頻度と同じ位で、
一般的に言う「特異体質」に当たるとのことです。

しかも小柴胡湯の場合、熱が出でたり、咳や息切れといった症状が出たとしても、
薬を飲むのを止めれると殆ど良くなります。

胸のレントゲン等で診断は容易で、治療をすぐに行えば、
殆ど治ってしまうと言うことです。

専門のところで丁寧に診てもらえば、漢方は安全と分かっていただけるでしょう。
要は、何か変わったことがあったら直ぐにかかりつけの先生に診ていただくことです。

回答)石川 友章

 


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